弁護士黒澤真志のブログ

虎ノ門(西新橋)で法律事務所を経営している弁護士のブログです。日常の出来事や普段考えていること等について、フランクに綴りたいと思います。

死と向き合うということ

2020年3月20日、ワニ君が亡くなりました。
何の話かといいますと、こちらです ↓

 
そうです。漫画での話です。
この漫画は、作者のきくちゆうきさんが、「100日後に死ぬワニ」という題名で、ツイッター上に、100日間、毎日4コマ漫画を投稿し続けた作品で、2020年3月20日に100日目を迎えたというわけです。
最初から宣言されていたとおり、100日目でワニ君が亡くなりました。
内容については、該当のツイッターを確認するか、今後、書籍が発売されるとのことなので、そちらをご確認いただければと思います。
 
私は、たまたま1日目にこのツイッターの投稿を発見したので、100日間、毎日19時に更新されるこの漫画を見続けてきたのですが、時が経つのは早いですね。
先日まで、まだ10日しか経過していないと思っていたのに、あれよあれよという間に50日が経過し、残り10日となり、当日を迎えてしまいました。
当日は、ツイッターを開く際に、心がとても重かったです。
 
この作品は、「死」をテーマにしておりますが、
これほど正面から死を捉えた作品は、今まであったでしょうか。
作者のきくちさんは、とても仲の良かった友人が、ある日突然、事故で亡くなってしまった経験を元に、この作品を書くことになったとのことです。
多くの人は、あまり死について考えないと思います。
大抵の人にとって、「死」とは、とても怖いものであるし、他人に起こってしまったら悲しく思うものです。
なので、目を背けたくなる気持ちはよく分かります。
でも、死は、人間にとって、少なくとも、避けては通れない出来事の一つなのです。この世に生まれた誰もが、死を迎えることになります。
だからこそ、死について、しっかりと向き合って、考えておくことは必要なのではないでしょうか。「死」を前提とした場合、この世界、人々、家族、友人、あるいは自分をどのように捉えるのか。どのように位置づけるのか。どのように構成するのか。
この作品は、「死」がある日突然訪れることも示されております。なので、現在と未来という時間軸の中でも、改めて死(ないしは生)を捉え直す必要もあるのではないかと思います。
 
以上のように、この作品は、突きつけられた死(自分の死も、他人の死も両方含まれると思います。)について、自分はどう捉えるのか、とても考えさせられ、本当に貴重な機会を与えてくれるものだと思います。
 
そこで、声を大にして言いたいのは、
 
電通案件」と騒いでいることは、非常にもったいないことなのではないか、
 
ということです。
 
電通案件」が何を指すのかというと、100日目の投稿が終わった直後に、この漫画のグッズ販売や単行本化のほか、映画化などが発表され、関連会社の中に電通が含まれていたことによって、「電通が金儲けのために最初から仕組んでいたことだった」として、この作品が電通案件と言われるようになりました。
実際には電通はほとんど絡んでいなかったようですが、少なくとも、100日目の投稿直後に一気に商業化されたことに、嫌悪感を感じた人も多かったのではないかと思います。
 
私も、確かに多少の違和感は感じました(あまりにも展開が早すぎたので)。
しかし、この違和感は、プロモーションを担当した企業に向けられるべきものであって、作品自体に向けられるものではないはずです。冷静になって考えれば、作品とその違和感を向けられるべき対象は、全く関係ないはずです。
プロモーションを担当した企業も、設立から間もない企業であったようで、経験が十分ではなかったのかもしれません。作者のきくちさんは、担当企業の熱意を感じたので依頼することにした旨を語っており、少なくとも、その企業は、この作品をもっと世間に広めようという想いで動いていたことは間違いないことだと思います。
 
いずれにせよ、作品自体に、何の不備も落ち度もありません。
なので、
 
「せっかくの作品が、せっかくの機会を与えてくれたのに、これを逃してよいのか」
 
ということを、しっかりと考えるべきではないでしょうか。
もしかしたら、死と向き合いたくないがために、「電通案件」と騒ぐことによって目を背けている人もいるのかもしれません。
怖いかもしれませんが、もしそうであれば、その自分の気持ちに気づいて、1歩でも前に踏み出してみると、より強い自分になれるのではないでしょうか。
 
ワニ君の死が無駄にならないように。