弁護士黒澤真志のブログ

虎ノ門(西新橋)で法律事務所を経営している弁護士のブログです。日常の出来事や普段考えていること等について、フランクに綴りたいと思います。

離婚の予防法務3〜親権を獲得するために〜

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親権というものがあることはご存じかと思いますが、
離婚する際には、もし20歳未満(2022年4月から18歳未満になります)の子供がいる場合には、父母のいずれかを親権者に決めなければなりません(民法819条1項)。
父母の協議で決められない場合には、家庭裁判所が審判で強制的に決めることになります。
したがって、子供の親権を獲得したいと思っている方は、審判に備えて、親権を認めて貰えるための事前準備を行っておく必要があります。
 
親権の獲得に関して、審判で考慮される要素としては、①父母双方の事情(監護に関する意欲と能力、健康状態、経済的・精神的環境、居住・教育環境、子に対する愛情の程度、実家の資産、親族・友人等の援助の可能性)、②子の側の事情(年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況、従来の環境への適応状況、環境の変化への対応性、子自身の意向)、③監護の実績・継続性(現状)の尊重、④母性、⑤子の意思、⑥別居・離婚後の親子の交流の許容性(寛容性)、⑦子の奪取の違法性等が挙げられます。
 
以上の中で、事前に押さえておきたい重要なものは、
 
③監護の実績・継続性(現状)の尊重
 
です。
 
すなわち、子供と同居し、面倒をみてきた実績ないし状態が、審判において、親権が認められるための重要な考慮要素となるのです。
 
親権の判断においては、上記④の「母性」も重要です。
最近では、父母の役割が変化しているとはいえ、やはり多くの家庭では、母親が子供の面倒を見ていることが多いかと思われます。
したがって、母親の方が親権獲得にあたって有利であることは間違いありません。
そうだとしても、離婚において親権を巡って争いが生じ、協議が整わない場合、多くのケースでは別居することになります。
この別居の際に、
 
子供が父母のどちらと同居することになるのか
 
が極めて重要となります。
離婚協議が整わない場合、弁護士を入れての交渉や、離婚調停、離婚裁判などを経て離婚や親権を決定することになるのですが、通常は、離婚の裁判や親権の審判までに1〜2年の時間が掛かってしまいます。
したがって、子供と同居した父または母が、その子供の面倒をみることになり、それが裁判ないし審判の直前まで続くことになります。
裁判所は、この生活状況に問題がなければ、これを尊重する傾向にあるので、極めて重要な考慮要素となるのです。
上記のとおり母親の方が親権獲得に関して有利であるとはいえ、子供が父親と暮らし、その生活に馴染んでしまった場合、父親の方に親権が認められてしまうケースもあるのです。
 
したがって、もし親権を獲得したいのであれば、別居時に子供と同居することが必要であり、かつ、相手に子供を連れ去られないことも重要となってきます。
上記⑦に「子の奪取の違法性」も、親権の考慮要素の一つとされていますが、個人的な感覚でいえば、近年問題視されるようになってはきておりますが、特に酷いケースでなければ、それ程重視されておらず、子供との生活状況の方が優先されてしまっているように思えます。
 
もし、子供を連れ去られてしまった場合には、子の監護権者の指定や子の引渡しの審判を求めたうえで、審判前の保全処分として、子の引渡しを求めることが必要になります。
なお、近年、民事執行法が改正され、子供の引渡しの直接強制が明記されました(新民事執行法174条〜176条)。こちらは、令和2年4月1日から施行されます。
 
結論:
親権を獲得するためには、配偶者と別居する場合には、子供と同居できるようにし、子供の連れ去りには注意しましょう。