弁護士黒澤真志のブログ

虎ノ門(西新橋)で法律事務所を経営している弁護士のブログです。日常の出来事や普段考えていること等について、フランクに綴りたいと思います。

離婚の予防法務2〜財産分与のための事前準備〜

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財産分与という制度をご存じでしょうか?
 
離婚する際には、夫婦の一方が他方に対して、婚姻期間中(原則:結婚後から別居日まで)に築いた財産を清算するため、その分与を求めることができ、これを財産分与(民法768条1項・771条)といいます。
 
例えば、婚姻期間中に築いた財産として、預貯金のみがあったとして、これが夫名義の預金口座にあったとしても、妻は夫に対して原則としてその半分の分与を請求することができます。
 
妻が専業主婦だったような場合でも、原則として半分を請求できるので、清算の対象となる財産が多い場合には、かなり強力な手段となるものですが、事前に準備しておかなければならない点があります。
 
それは、
 
清算の対象となる財産を把握しておく必要がある
 
ということです。
 
清算の対象となり得る財産の例としては、不動産、動産、預貯金、証券、債権、ゴルフ会員権、保険の解約返戻金等といったものがあります。
財産分与を請求するためには、裁判等においては、対象となる財産の存在を、請求する側が立証しなければなりません。
したがって、相手が自分の対象財産の任意の開示を拒んだ場合には、立証ができず、認められなくなってしまうことになります。
 
例えば、預貯金については、銀行名のみならず、支店名まで押さえておく必要があります。
証券については、証券会社を把握していおく必要があります。
生命保険の解約返戻金等についても、やはり加入している保険の保険会社を把握しておく必要があるのです。
 
後から調査することもできる場合がありますが、相手に完全に隠されてしまった場合には困難なことも多く(基本的にはペナルティもありません。)、場合によっては余計な時間と費用が掛かってしまいます。
 
財産の管理を相手任せにしている夫婦は多いですが、離婚の際に財産分与が認められなくなる不利益があるので、注意しましょう。
離婚を思い立ったら、別居する前に、上記を把握しておくと良いと思います。
事前の準備の方法等について、もし疑問点等がございましたら、ぜひ弁護士にご相談ください。

結論:
離婚を思い立った場合には、別居する前に相手の財産を把握しておく

離婚の予防法務1〜浮気をしても離婚できる?

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先日、友人から「浮気(不貞)がバレたので離婚したい」という相談を受けました(最低なヤツです)。
詳しく話を聞くと、ずっと前から仲が悪くて、お互い家で口も聞かない状態で、いつ離婚してもおかしくない状況だったけど、決定的な出来事がなかったので、そのまま同居を続けていたとのことでした。
なので、もし浮気が将来的にバレたとしても、そのときに離婚の話を切り出せばよいと考えていたようです。
結局、浮気がバレてしまったとのことで、私に相談してきました。
 
しかしながら、
 
浮気をしていた場合、相手に対して離婚を請求することはできません
 
民法には明確に定められていないのですが、
最高裁判所判例で、浮気された上に離婚が認められてしまったら踏んだり蹴ったりだ、という理由により、
原則として、浮気をした側からの離婚請求は認められないとされています。
浮気されても離婚が認められるのは、
浮気した時点で婚姻関係が破綻していた場合(ただ、破綻の認定はかなり厳しいです)や、
不当ではないといえる特別な事情がある場合に限定されます。
 
上記の友人の事例では、相手に浮気の証拠をばっちり押さえられており、かつ、「(腹いせに)絶対に離婚しない」と言われていました。
したがって、友人が裁判所に離婚したいと訴えても、認められる可能性はほとんどないことになります。
単に仲が良くなかったというだけでは、「破綻」していたとは認められません。
このような状態になってしまっては、少なくとも法的手段としては、手遅れです。
 
将来的なことを言えば、
①長年別居が継続していて(最低でも8年程度)
②未成熟の子供が存在せず、
③相手が精神的、社会的、経済的に苛酷な状態でない場合には、
離婚が認められます。
したがって、友人のケースでは、これから長年別居して、子供が成人になり、相手も自立できている場合には、離婚できることになりますが、道のりとしては困難です。
 
私は、夫婦の仲がよくないのであれば、離婚もやむを得ないかと思うのですが、離婚を視野に入れている方は離婚の前に浮気をしないように注意しましょう。
最低限の知識として、知っておく必要があります。
 
結論:
もし離婚をしたかったら、その前に不貞をしてはいけない、という知識をもっておく。
 

予防法務の必要性

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以前の記事で法務の種類に触れ、予防法務は、将来発生しるうる問題を予防するための法務といいましたが、この定義は何か決まりがあるものではなく、その概念の外延は曖昧といえます。
そこで、私が「予防法務」というときは、紛争が発生しないために、あるいは紛争が発生したときに簡易・迅速に解決できるようにするために、事前に取り得る方策であり、これを実施すること、と定義します。
契約書のチェックもそうですし、証拠の収集作業等の事実行為も含まれます。
これらをある程度、明確化・類型化できないか、というのが私の問題意識です。
将来的には、「予防法務の対策をとっていなかったのだから、敗訴してもやむを得ないよ」と言われるぐらい、一般に広まればよいなと考えております。
なぜ、予防法務が必要なのかは、こちら をご確認ください。

投資話にご注意

先日、とある知人から、
 
「良い投資話がある」
 
と、勧誘を受けました。その内容は、
 
「元本保証で年利6パーセント。借用書も発行されるので堅実な案件です。一口100万円から投資可能です。」
 
とのことでした。
みなさんは、この投資案件は、良いものだとお考えですか?
この手の投資話には珍しく、比較的低い利率(とはいえ、一般的には年利6パーセントはかなりのパフォーマンスですが)であることは置くとして、
 
・元本保証なんだから、安全な投資案件なのではないか。
・借用書がしっかり発行されるのだから、問題ないのではないか。
 
とお考えの方もいらっしゃるかと思います。
 

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しかしながら、これらは全て間違いです。
この手の投資案件は、
 

100パーセント損します。

 
断言します。100パーセントです。
そもそもですが、元本保証は出資法で例外的な場合を除き禁止されています。
そのような法的知識もない(あるいは敢えてやっている)業者が、誠実に義務を履行することは期待できないでしょう。
 
大抵ですが、この手の投資案件は、しばらくは約定に従った配当を行うものの、「業績が悪化した」等と言って、義務を怠るようになります(実際に資金運用をしていない場合は「ポンジスキーム」と言います。ちなみに、この点が業者が「詐欺」に見えないようにする工夫の一つです。)。
 
業者が義務を履行しなかった場合、借用書があるから問題ないと思われるかもしれませんが、誤りです。確かに、訴訟を提起すれば、判決で勝訴することは可能ですが、回収ができないのです。
なぜ回収できないかと言うと、ここは法律に不備があるところなのですが、相手に財産がない場合には、例え判決で勝訴した場合でも、1円も貰えないのです。
そして、このような投資案件を扱う悪質な業者は、そのことを理解していて、集めたお金のを既にどこかに動かしてしまっており(あるいは、既に費消してしまっており)、財産がない状態にしてしまっているのです。
財産のありかを探す手段も、個人情報保護に守られた現代社会においては、ほとんどないに等しいです。
 
考えてみれば、良い投資案件であれば、他人に勧めずに自分で行うはずです。
他人に勧める合理性は全くありませんね。
 
ちなみにですが、このような案件について、警察に相談しても、警察が動いてくれることはほとんどありません。
この点は、本当に警察の怠慢で、だからこそ悪質な詐欺が横行してしまっていて、非常に憤りを感じるのですが、これが現実です。
したがって、詐欺にあった場合には、よほど運がよくない限り、回収することはできないのです。
 
予防法務的な観点からすれば、上記を念頭においた上で、もし投資をするのであれば、リスクを踏まえておくことが必要となります。
是非ともご注意ください。

弁護士10周年

月日が経つのは早いもので、弁護士になってからもうすぐ10年になります。

この10年間は本当にあっという間でしたし、色々な経験もしましたが、もう少し上手く出来たのではないかという反省もあることは事実です。

反省はしっかりと今後に活かし、更なる成長を目指していきたいと思います。

 

さて、弁護士は、司法試験に合格した後に、司法修習という1年間の研修を経て、弁護士登録(または裁判官や検察官に登録)することになります。

この1年間の研修の単位ごとに、「期」と呼ばれる番号が付されており、私は第62期の司法修習生ということになります。

この司法修習を修了した後、10年経ったときに、熱海で10周年記念会が開催されます。

先日、これが開催されたので、参加してきました。

 

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熱海・後楽園ホテルにて

 

総勢500名を超える同期が参加したとのことでしたが、司法修習は合同修習と呼ばれる和光市の研修所で行われる授業でも、70名程度のクラスで授業を受けるので、ほとんどの参加者は知らない方々ばかりでしたが、これだけ多くの同期が全国で活躍していることを想像すると、自分も負けてはいられないという気持ちになりました。

 

私のクラスからの参加者は、約20名でしたが、当時のことを懐かしみながら楽しく交流できました。相変わらずだなと思う方がいる一方で、ブラジルに行って地元のテレビに映って話題になった方もいたりと、色々な分野で活躍されていました。

 

20周年の記念行事は、京都で開催されるのが恒例となっております。

自分はそのときに、どのような価値を提供できる人になっているだろうか。

日々試行錯誤を続けていくしかないですね。

伝説の加藤鷹さんにお会いしました

最近、参加させて頂いているフットサルを主催している吉田さんから、フットサル終了後に、ご自身が関係している飲食店にて「加藤鷹さんのイベントがあるから来ない?」と言われ、急遽参加してみました。
加藤鷹さんといえば、男性であれば知らない人はいないであろう伝説のAV男優です。
加藤鷹さんは、還暦とのことでしたが、ものすごくエネルギッシュな方で、参加者の方の質問に対し、内容ごまかすことなく、率直に回答されていたのが印象的でした。
参考になったお話は多々あるのですが、このブログで記載してしまうと、放送禁止用語を連発せざるを得ず、アカウント凍結となってしまう可能性があるので、申し訳ございませんが、自重させていただきます(笑)。
 
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本も購入させて頂きました。このポーズは!?
 

予防法務について〜法務の種類〜

 
弁護士なのにこれまで法的な話題に全く触れていなかったので、たまには法律関連の話をします笑
 
みなさまは、「予防法務」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
 
実は、法律業務にも種類があります。
法律上の規定があるわけではないですが、ここでは4つに分けたいと思います。
 
1つ目は「臨床法務
これは、紛争や法律問題が発生したときに、それに事後的に対応する問題対応型の法務をいいます。
裁判になって弁護士が対応しているのは典型的な臨床法務といえます。
 
2つ目は上記に出た「予防法務
これは、紛争等が発生してから事後的に対応するのは遅いということで、事前に将来発生しうる問題を予防するための法務をいいます。
契約書の審査等は典型的な予防法務といえます。
 
3つ目は「戦略法務
これは、企業の経営に重大な影響を及ぼす主要な取引や投資案件等に対して早期の段階から法的リスク回避のために関与する法務をいいます。
スタートアップやベンチャー企業の企業内弁護士には、この役割が求められることが多いと思われます。
 
4つ目は「経営法務
これは、企業の経営に関係する法的な問題に対応し、経営戦略を法的な側面からサポートする法務をいいます。
コンプライアンス法令遵守体制)の構築などが典型といえます。
 
 
上記のうち、私は「予防法務」に大きな関心を抱いております。
 
「予防法務」という単語自体は、一般に多く用いられており、インターネットで検索しても、多くのページがヒットするものと思われます。
しかしながら、予防法務といっても、具体的な手法が確立されているわけではありません。おそらく、多くの弁護士や他の士業もしくは企業の法務部の方々が手探りの状態で行っているのではないかと思います。
そこで、私は、もう少し「予防法務」というものを精緻化する必要があるのではないかと考え、大きな関心をもっております。
 
なぜ、予防法務が重要なのか、ということはまた次の機会にお話したいと思いますが、みなさまには、是非この単語を覚えていて頂ければと思います!